歯牙移植とは?インプラントとの違いやメリットについて詳しく解説!

長髪でタンクトップを着た女性が自身の歯を確認している

歯牙移植(しがいしょく)とは、歯を失った部分に親知らずなどの自分の歯を移植する治療法です。インプラントと似ていますが、治療内容だけでなくメリットやデメリット、治療期間にも大きな違いがあります。

今回は、歯牙移植とインプラントとの違いを詳しく解説します。

歯牙移植とは?

レントゲンで撮った歯の画像治療器具で指している

歯牙移植とは、自分の歯を別の場所から取り出し、欠損した箇所に移植する治療法です。歯茎や歯髄に問題がなければ、取り出した歯をそのまま再利用することができます。

ただし、歯牙移植は、移植する歯と移植先の歯の形や大きさが一致していないと治療が受けられません。そのため、親知らずや使用できる歯が残っていたとしても、すべての人が歯牙移植を受けられるというわけではないのです。

ブリッジは固定のために両隣の歯を削る必要がありますが、歯牙移植は健康な歯を傷つけることなく歯を再生できます。ブリッジ以外にも、入れ歯やインプラントなど歯牙移植に代わる治療法はいくつかありますが、噛み心地がよくなかったり歯周病などの病気になった際の予後が悪かったりなど、デメリットがあります。歯牙移植は天然の歯を使用するため、人工歯では再現できない自然な噛み心地が得られることは大きなメリットといえるでしょう。

歯牙移植とインプラントの違い

歯科医院で治療を受けている女性

歯牙移植とインプラントは、欠損部分に新しい歯を埋めることで歯を再生する治療法です。治療目的は一緒ですが、治療内容や費用などが大きく異なります。歯牙移植とインプラントの違いについて、表にまとめてみました。

〈歯牙移植とインプラントの違い〉

  歯牙移植 インプラント
特徴 ・自分の歯を使用する ・人工膜を残せる ・金属製のインプラント体とアバットメント、セラミック素材の人工歯を使用する ・人工膜を失う
生存率(5年) 90% 95%
治療期間 移植は1日で完了する / 骨との結合までに1~3か月かかる インプラント埋入は1日で完了する / 骨との結合までに3~6か月かかる
保険適用の有無 移植先の歯が残っている状態かつ親知らずを使う場合は、保険適用になる 上記の条件に満たない場合は自費診療になる(100,000円~) 自費診療(200,000円~)
治療難易度 高い /  一般歯科では難しく、専門機関で治療を受ける必要がある 歯牙移植より低い /  一般的な歯科医院で治療が受けられる

 

歯牙移植は、抜歯と移植を同時に行う必要があり、スピードが求められる治療法です。歯を取り出している時間が長いと手術の成功率が下がることから、インプラントよりも治療が難しいといわれています。

インプラントは歯の欠損している場所に人工の歯根を埋め込むだけであり、歯を取り出して管理する必要がないため、一般の歯科医院でも受けられます。

ただし、人工の歯根を埋め込むには、顎の骨に十分な骨量が必要となります。骨量が足りない場合は、別で「骨造成」という治療を受けなければなりません。

歯牙移植のメリット・デメリット

表情が描かれた木製ブロックのうちの1つを持っている

歯牙移植のメリットは、歯根膜を残せること以外にもさまざまなメリットがあります。インプラントに比べ治療条件が複雑など、デメリットも存在します。ここでは、歯牙移植のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

歯牙移植のメリット

歯牙移植のメリットは、以下の5つです。

それぞれ解説していきます

歯根膜を残せる

歯根膜とは、歯根と歯槽骨のあいだに存在する膜のことです。噛んだときの歯にかかる力を吸収する役割があり、顎の骨への負担が小さくなります。

歯科矯正ができる

歯根膜があることにより歯を動かすことができるため、歯科矯正も可能になります。インプラントの場合は、歯根膜が残せないため、顎の骨への負担がかかりやすかったり歯科矯正が受けられなかったりするデメリットがあります。

治療費が安く、手術による負担が少ない

歯牙移植は自分自身の歯を利用するため、インプラントに比べて治療費が安く、治療による身体への負担も少ないのが特徴です。

金属アレルギーでも治療が受けられる

インプラント体やアバットメントはチタンという金属製であるため、金属アレルギーがある人は受けられません。現在では、人工歯だけでなく、インプラント体などすべての部品をセラミック素材で治療する「オールセラミック」も出てきていますが、まだ主流ではないため受けられる医院は限られています。

歯牙移植は、自分の歯を使用するため金属アレルギーの心配もありません。

歯牙移植のデメリット

歯牙移植のデメリットは、以下の4つです。

それぞれ解説していきます。

虫歯のリスクが残る

インプラントは人工歯なので虫歯にはなりませんが、歯牙移植した歯は天然の歯であるため、ほかの歯と同様に虫歯になるリスクが残ります。

治療の難易度が高い

歯牙移植の治療難易度はインプラントよりも高いので、医師の技術力が求められる治療法です。歯根膜は抜歯してから18分以上経過すると、生存率が下がっていくというデータがあります。そのため、移植する歯をいかに早く固定できるかが治療成功のカギになります。

高齢者には適用が難しい

移植した歯の定着率が低いということから、高齢者には適用できないことが多いです。

治療条件が複雑である

歯牙移植は移植する歯の選択肢が限られてしまうため、条件をクリアできなければそもそも治療が受けられません。実際に抜いてみて移植ができないと判断される場合もあります。

歯牙移植を受けるための条件

丸とバツが描かれたブロック

歯牙移植は移植する歯の状態によって治療の可否が決まります。

歯牙移植を受けるためには、以下のような条件が必要となります。

移植する歯の形や大きさ、歯根の長さが一致していること

歯牙移植では、移植する歯が埋める場所の歯茎に適合できるかが重要といえます。移植に用いる歯の形や大きさ、歯根の長さが移植先に一致していないと治療は難しくなります。

また、歯根の形が複雑でないことも重要です。歯根は、歯の種類や人によって本数も形も異なり、まっすぐに生えている場合もあれば大きく曲がっている場合もあります。「歯根が短い」「癒着していない」など、形が複雑でなければ、歯根膜を傷つけることなく歯を移植することができるので、治療の成功率は高くなります。

移植する歯の歯根膜が残っていること

歯根膜には、移植後に歯と顎の骨を結合させる重要な役割があります。歯根膜が十分に残っていないと移植後に歯と骨の結合が進まないため、歯が固定されない可能性があります。歯根膜の量が少ない場合は、歯牙移植を受けることはできません。

不要かつ健康な歯があること

基本的に移植する歯は親知らずですが、噛み合わせに影響がなければ親知らず以外の歯も使うことができます。また、虫歯でもろくなっていたり、歯周病で歯根膜が薄くなっていたりすると移植の成功率が下がります。

歯牙移植ができる歯は、抜歯しても影響がなく、歯根膜も十分にある健康な歯のみです。

40代以下(目安)であること

40歳を超えると、歯牙移植後に歯を喪失する確率が高くなるという研究報告があります。移植後の生存率だけでなく、治療後の回復も遅くなりやすいです。また、歯周病にかかるリスクも高くなるため、若年者に比べて移植後の歯の寿命が短くなる傾向にあります。

ただし、明確な基準はないため、口内の状態によっては40歳以上でも歯牙移植を受けられる場合があります。

歯牙移植の治療の流れ

歯科医院で説明を受けている女性

歯牙移植は1回で治療が終わるわけではありません。移植後、消毒や神経の治療など歯の再生には複数回の処置が必要です。

1.診察・検査を行う

レントゲンやCTの撮影を行い、移植する歯の状態を観察します。歯牙移植が可能と判断されたら治療計画をたてます。歯牙移植に関する心配事などがある場合は、この場で解決しておきましょう。

2.麻酔後、移植先の骨に穴を開ける

抜歯などの治療を始める前に、局所麻酔を行います。局所麻酔だけでは不安な場合は、静脈麻酔を行なっている医院もあるので、治療前に相談しておきましょう。麻酔が効いてきたら、移植先の骨に歯を埋めるための穴を開けます。

3.移植する歯を抜歯する

移植先の骨に穴を開けたら、移植する歯を抜歯します。移植先に適合するよう、必要であれば医師が微調整を行います。取り出している時間が長いと移植後の生存率が悪くなるため、抜歯から埋入までの早さが重要といえるでしょう。

4.移植する歯を埋入し、固定する

歯を埋め、移植先に適合していると確認できたら、ワイヤーや糸を使って隣の歯と固定します。その後、歯茎の縫合を行います。

5.移植した部分を消毒、抜糸する

移植翌日に傷口を消毒し、感染を起こしていないか確認します。1週間ほど経過したら、抜糸も行います。

6.根管治療を行う

移植後、2週間〜1か月以内に根管治療を行う場合があります。根管治療とは、神経を抜いた管に特別な薬剤を注入し、感染を防ぐ治療法です。

7.詰め物や被せ物をする

根管治療後、痛みや炎症などがなければ、歯の形を整える作業に入ります。詰め物または被せ物を装着し、歯の頭部分である歯冠を修復します。

歯牙移植とインプラント、どちらがいいの?

黄色い服を着た女性の手の上に赤と青のクエスチョンマークがある

歯牙移植とインプラントのどちらがいいかは患者さんの症状や状態によって異なりますが、治療の条件を満たしているなら歯牙移植がおすすめです。

歯牙移植の最大のメリットは、歯根膜を残せるという点です。歯根膜は噛んだ時の感覚を脳に伝え、食感として認知させます。自然な噛み心地が再現され、噛む力の調節にもつながります。また、顎の骨への負担も軽減してくれるため、歯周病になった場合、進行のスピードを抑えて予後が悪くなるのも防いでくれます。

場合によってはインプラント治療のほうが適しているということもあるので、医師と相談して決めるといいでしょう。

まとめ

歯科医院の椅子に座り目に赤いハートを当てている

今回は、歯牙移植とインプラントの違いについて解説しました。

歯牙移植は歯根膜を残せるという大きなメリットがあります。歯根膜は、歯や顎の骨への負担を減らすだけでなく、人工歯では感じることのできない自然な噛み心地を実現できます。親知らずなど不要な歯がある場合は、インプラントを考える前に歯牙移植を検討してみてはいかがでしょうか。ただし、治療難易度が高いため歯科医院選びは慎重に行いましょう。

 

 

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