白くて美しい自然な歯を手に入れることのできる「セラミック治療」で、美しい口元に憧れる方も多いのではないでしょうか。
セラミック治療は審美的にメリットの多い治療法ですが、デメリットもあります。どんな治療にもメリット・デメリットがありますので、セラミック治療の特徴を知り、治療方法を選択するときの参考にしましょう。
歯の構造とは
さまざまな治療法の理解を深めるために、歯の構造を知っておきましょう。
セラミック治療の解説をする前に、歯の構造について解説します。
エナメル質
歯の歯茎から出ている部分の一番表側の組織です。人体の中でもっとも硬い組織だといわれています。エナメル質には、神経や血管が通っていないため、エナメル質だけの虫歯は痛みを感じることはありません。
象牙質
エナメル質の下の層にあたる組織です。エナメル質よりも柔らかく、象牙細管という細い管が歯の神経からエナメル質にかけて通っており、刺激が加わると痛みを感じることがあります。
歯髄(しずい)
いわゆる歯の神経といわれる組織です。神経と血管が通っており、歯に栄養を運びます。また、歯に伝わる刺激を感知し、脳に伝えます。
虫歯が大きくなり神経が死んでしまったり、神経を取る治療をしたりすると、歯は刺激を感じなくなるため、虫歯などの異常があっても気づきません。また、歯自体が脆くなるため割れやすく、歯の寿命が短くなってしまいます。
セメント質
歯の根の部分の、一番表面の組織です。硬い組織ですがエナメル質より柔らかいです。歯を支える骨(歯槽骨)と結合しています。
歯槽骨(しそうこつ)
歯を支えている骨です。歯周病が進行すると、歯槽骨は溶かされてしまいます。
歯根膜(しこんまく)
歯槽骨とセメント質を結びつける繊維性の組織です。歯に加わる力を吸収するクッションのような役割があります。
セラミック治療とは
セラミック治療とは、歯の被せ物に「セラミック」という素材を使用した歯科治療のことです。セラミックは、いわゆる陶器のような材質でできており、透明感があります。色の調整もしやすいことから、天然の歯と変わらない自然な見た目で、白くて美しい歯を作ることができます。
ここからは、セラミック治療の種類とメリット・デメリットについて解説します。セラミックのデメリットも理解したうえで治療を選択することが大切です。
セラミック治療の種類
セラミック治療は、その材質の組み合わせなどにより、いくつかの種類があります。
歯科医院や歯科技工所によって多少呼び方が異なる場合がありますが、代表的なものを紹介していきます。
オールセラミッククラウン
金属をまったく使わず、セラミックのみで作られた被せ物です。金属を使っていないので、金属アレルギーの方でも安心です。耐久性をよくするために、ある程度の厚みが必要になるので、土台を削る量が多くなります。
ジルコニアオールセラミッククラウン
ジルコニアは人工ダイヤモンドといわれており、強度と美しさをもつセラミック系の素材です。金属に匹敵する強度があり、割れる心配がほとんどなく、噛み合わせの強い奥歯にも使うことができます。
ただし、強度が高すぎるので、噛み合う反対側の歯とのバランスを考える必要があります。通常のセラミックよりも費用が高価なのがデメリットです。
ハイブリッドセラミッククラウン
レジンというプラスチック系の素材に、セラミックを混ぜた材質です。審美性に優れていますが、オールセラミックやジルコニアオールセラミックよりは劣ります。その分、費用は安価です。
メタルボンド
セラミックの内側に金属を裏打ちした被せ物です。オールセラミックと比べて審美性に劣りますが、内側が金属なので強度があります。金属アレルギーがある場合には適していませんが、内側の金属の種類を変えることは可能です。
セラミック治療のメリット
セラミック治療のメリットについて解説します。
審美性が優れている
最大のメリットは、自然な美しい白さで審美性に優れていることです。天然の歯と見間違うほどなので、前歯の治療にも適しています。
歯茎の色素沈着がない
金属の被せ物は、長期間使用していると金属イオンが唾液中に流出して、歯茎に色素沈着を起こすことがあります。金属をまったく使用しないオールセラミッククラウンの場合は、その心配がありません。
虫歯が再発しにくい
とくに保険適用の銀歯の場合は、歯との接合性が低いため、治療後しばらく経つと歯と金属との間にすき間ができることがあります。そのまま放置すると、そこに常にプラークが溜まり、虫歯を再発します。
一方、セラミックの場合は、歯との接合性に優れているため、時間が経ってもすき間ができにくく虫歯の再発のリスクが低いです。
金属アレルギーの心配がない
オールセラミッククラウンの場合は、金属をまったく使っていないので、金属アレルギーの心配がありません。
セラミック治療のデメリット
つづいて、セラミック治療のデメリットについて解説します。
費用が高い
セラミック治療は、保険が適用されないので自費診療です。価格は歯科医院やセラミック治療の種類によっても異なりますが、1本あたり10万円程度〜が多いでしょう。
審美治療や矯正治療では健康な歯を削らなくてはならない
虫歯などの病気がなく、歯の色を白く美しくすることや歯の形を整えることを目的とした場合、健康な歯を削らなくてはいけません。健康な歯を削るということは、歯自体の寿命を縮めることにも繋がります。
健康な歯を削るデメリットについては、のちほど詳しく解説します。
衝撃で割れることがある
セラミックは、基本的には丈夫な材質です。
しかし、陶器と同じような材質なので、強い力が一気にかかるような衝撃で割れてしまうことがあります。
なぜセラミック治療では健康な歯を削るのか?
前提として、どんな材料でも被せ物をする場合には、被せ物で歯をすっぽりと覆うことができる土台を作らなければいけません。土台の形を作るために、ある程度の量の歯を削る必要があります。
虫歯の治療をセラミックで行う場合には、通常であれば銀歯で被せるところをセラミックで被せる違いしかないため、健康な歯を余分に削る必要はありません。
しかし、審美や矯正を目的としたセラミック治療では健康な歯を削らなくてはいけません。
審美や矯正のセラミック治療で健康な歯を削る理由
審美性をよくすることを目的としたセラミック治療では、健康な歯質を全周削って、セラミックを被せる土台をつくります。とくに材料のすべてがセラミックでできているオールセラミッククラウンの場合は、厚みがないと耐久性が低くなるため、歯を削る量が多くなります。
また、セラミックを利用した矯正で歯並びを整えることを目的としている場合には、歯の向きや角度も考慮して土台をつくる必要があるため、さらに歯を削る量が多くなる可能性があります。
健康な歯を削るデメリット
健康な歯を削ることは、歯の寿命を縮めることに繋がります。
具体的には次のようなリスクが挙げられます。とくに健康な歯質を削る量が多い場合にリスクが高くなります。
歯髄の反応性炎症
神経がある歯の場合、歯を削ったときの刺激により歯髄が敏感になって、一時的に痛みを起こすことがあります。咬んだときに違和感をもつ、歯がズキっと痛むなどの症状です。
歯髄炎
歯を削る量が増え、象牙質の露出量が増えると、歯髄炎を起こすことがあります。ズキズキと痛む、冷たいものや温かいものがしみるなどの症状です。
歯髄炎は、場合によっては神経を取る治療が必要です。神経は一度取ってしまうと元には戻りません。神経を取った歯は脆く割れやすくなり、歯の寿命をぐんと縮めてしまいますので、できる限り神経は取らないほうがよいです。
健康な歯を削らない治療法はあるのか?
セラミック治療では、歯を削らない方法はありません。少しでも歯を削る量を少なくしたい場合には「ラミネートベニア」という治療法があります。
また、歯を白くしたい場合には、セラミック治療ではなくホワイトニング治療を選択する方法があります。
ラミネートベニア
歯の表面を薄く削り、付け爪のようにセラミックのチップを表面に貼り付ける治療法です。前歯にも適用できます。審美的に優れていますが、噛み合わせの状況によっては外れたり割れたりしやすい可能性があります。
ホワイトニング
過酸化水素を主原料としたホワイトニング剤を歯の表面に作用させ、光を照射することで、歯自体の色を白くする方法です。歯を削らなくてもいいので、健康な歯を維持することができます。
ただし、効果の程度には個人差があります。また、ホワイトニングで得た歯の白さは永遠ではありません。徐々に元に戻ってしまうため、白さを維持したい場合には繰り返し施術を受ける必要があります。
まとめ
セラミック治療は、白く美しく自然な歯を手に入れることができる魅力的な治療法ですが、デメリットも存在します。削った歯は元には戻りません。メリット・デメリットのバランスを考え、慎重に判断することが大切です。
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