インプラント治療は、歯を喪失してしまったときの治療法としてよく耳にします。
インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に被せ物をする治療方法です。入れ歯やブリッジに比べて、ほかの歯への影響がなく、噛みやすい特徴があります。メリットが多いインプラントですが、寿命がきたらどうなるのか不安に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、インプラントの寿命と寿命後の対応、寿命がきたインプラントを使い続けるリスクについて詳しく解説します。インプラント治療に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
インプラントの寿命はどれくらい？
インプラントの平均寿命はおよそ10～15年といわれています。
インプラントの寿命とは、一般的に人工歯根ごと脱離もしくは撤去するまでの残存期間を指します。インプラントの10～15年の累積残存率は、上顎でおよそ90％、下顎でおよそ94％です。9割以上の方が10～15年もの間、インプラントを使い続けています。
しかし、これらの数字はあくまでも平均の話で、これより短いケースも長いケースも存在します。埋入部位や口の中の状態、生活習慣などさまざまな要因に、インプラントの寿命は影響されます。上部構造（歯の部分）が壊れたり、割れたりした場合には、修理や作りなおしで対応可能です。
しかし、何らかの理由によって人工歯根が外れてしまったり、除去が必要になったりする場合には、インプラントを埋め込む外科手術からやり直す必要があります。
インプラントを一から埋めなおすには、費用や時間がかかります。インプラントを長く、安心して使い続けるために、定期的なメンテナンスを心がけましょう。
インプラントの寿命を短くしてしまう要因
インプラントの寿命はさまざまな要因に影響されます。
ここでは、インプラントの寿命を短くしてしまう5つの要因について解説します。
メンテナンス不足
定期的な歯科医院でのメンテナンスは、インプラントを長持ちさせるために必要不可欠です。
定期的に歯科医師や歯科衛生士による専門的なケアを受けることで、インプラント周囲のトラブルを予防します。また、定期的にインプラントの状態を確認することで、トラブルの早期発見・早期治療にもつながります。
インプラント周囲炎
インプラント周囲の歯周病であるインプラント周囲炎は、インプラントが脱落する原因になる病気です。
インプラントは人工物のため、虫歯になることはありませんが、歯周病になることはあります。歯周病によってインプラントを支える顎の骨や周囲組織が炎症を起こし、悪化するとインプラントが抜けてしまうおそれがあるのです。
また、インプラントは構造上、天然の歯より歯周病にかかりやすい特徴があります。そのため、日々の歯磨きや定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアによって、インプラントの周りに汚れを溜めないようにする必要があるでしょう。
インプラントの品質が低い
品質の低いインプラントを使用すると、長くもたない可能性があります。インプラントによって骨とのくっつきやすさや強度が異なるからです。
インプラントは、世界中、数多くのメーカーから販売されており、歯科医院によって使用するメーカーはそれぞれ異なります。インプラント治療の際には、知名度と信頼性の高いメーカーのインプラントを使用しているか確認しておくとよいでしょう。有名なメーカーほど治療実績が多く、安全性や成功率が高い傾向にあります。
また、格安インプラントやマイナーなメーカーのインプラントは、トラブルへの迅速な対応が難しい場面もあります。修理のときに生産が終了していたり、部品の取り寄せに時間がかかったりするケースもあるため注意が必要です。
インプラントに負担のかかる歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりがある方は、インプラントに過度な力がかかり、上部構造の破損やインプラントの寿命に影響を与えます。
インプラント治療前に歯ぎしりや食いしばりを治すことが望ましいですが、治療後に再発することも考えられます。インプラント埋入後も症状が認められる場合には、マウスピースなどによって歯への負担を軽減させるようにしましょう。
喫煙習慣
喫煙習慣はインプラントの寿命を縮める一つの要因です。
喫煙をすると歯茎の血流が悪くなり、次のような悪影響を及ぼします。
- インプラント体（人工歯根）と骨の結合が悪くなる
- 感染症にかかりやすくなり、インプラント周囲炎のリスクが高まる
- インプラント埋入後の傷の治りが遅い
喫煙習慣はインプラント治療におけるリスクを高めるため、減煙や禁煙することをおすすめします。
インプラントに保証はある？
ほとんどのインプラントには5～10年ほどの保証がついています。特に有名なメーカーは、保証期間が長いところも多いです。保証期間内にインプラントの再治療が必要になった場合には、無償で再度治療を行うことが可能です。
ただし、保証には定期的なメンテナンスなどいくつかの条件が設けられているため注意しましょう。
また、保証期間がインプラント体（人工歯根）と上部構造（歯の部分）で異なるケースもあります。治療する歯科医院で、必ず確認するようにしてください。
インプラントの寿命がきたらどうする？
インプラントの寿命がきたときの選択肢は、再度インプラントの治療をするか、入れ歯やブリッジなどのほかの治療をするかに分かれます。
顎の骨や全身状態、口の状態に問題がなければ、再度インプラント治療することが可能です。また、インプラントの保証期間内で条件を満たせば、無償で再度インプラント治療できます。残った歯の状態にもよりますが、保険治療の入れ歯やブリッジの治療に変更することもできるでしょう。
寿命がきたインプラントを使い続けてしまうと
折れている、抜けそう、ぐらぐらするなど、寿命がきたインプラントを使い続けると、次のようなリスクがあります。
自然にインプラントが抜ける
重度のインプラント周囲炎の場合、インプラントと骨の結合面積が少なくなり、自然にインプラントが脱落する可能性があります。食事中や睡眠中に抜けてしまうと、飲み込んだり、気道に入りこんだりしてしまう危険があるため、注意が必要です。
痛みが出る
ぐらぐらしていたり、歯茎が炎症していたりすると、痛みが出ることがあります。痛みがあることで食べ物を噛むことができず、体や日常生活にも影響が出るでしょう。
次のインプラント治療ができなくなる
寿命がきたインプラントを放置しておくと、最悪の場合、次のインプラント治療ができないおそれがあります。特に、インプラント周囲炎はインプラント周囲の顎の骨が溶けてしまうため、次にインプラント治療をしようとしたときに顎の骨が足りず、治療が難しいケースも考えられます。
隣の歯に影響がでる
寿命がきたインプラントは、インプラントそのものだけでなく、隣の歯に影響する可能性があります。
歯周組織や顎の骨は、隣の歯同士でつながっています。そのため、寿命がきたインプラントをいつまでも放置していると、インプラント周囲の歯周病によって隣の歯の歯茎にも影響が及ぶため、注意が必要です。
インプラントの寿命を伸ばすために
インプラントの寿命を伸ばすために、次のポイントを意識しましょう。
丁寧なセルフケア
インプラントのトラブルの多くは、歯周病によるものです。インプラントは、天然歯よりも歯周病にかかりやすい特徴があります。毎日の歯磨きに加えて、歯間ブラシなども使ってインプラント周囲の清潔を保つようにしましょう。
定期的な歯科医院でのメンテナンス
定期的に歯科医師や歯科衛生士によるメンテナンスを受けましょう。ふだんのケアでは汚れが残りやすい歯周ポケットの汚れなどを除去することで、インプラント周りのトラブルを予防します。
インプラントのトラブルは自分では気づきにくいものです。定期的にプロのチェックを受けることで、トラブルの早期発見・早期治療に努めましょう。
適切な噛み合わせの調整
インプラント治療前後にかけて、継続的に噛み合わせのチェックを受けるようにしましょう。過度にインプラントに力がかかると、周りの骨が吸収されてしまうおそれがあるからです。
天然歯の場合、歯と骨の間にクッションとなる歯根膜があり、骨への負担を和らげます。
しかし、インプラントの場合は歯根膜がないため、負担や衝撃が歯や骨にダイレクトに伝わってしまいます。そのため、噛み合わせには十分注意が必要です。
信頼できる歯科医院の選択
信頼できる歯科医院を選びましょう。
インプラント治療は、歯科医師の深い知識や高い技術を必要とします。インプラント治療の経験が豊富で、信頼できる歯科医院なら、インプラントのメーカーにもこだわりをもって治療するでしょう。
⑤減煙・禁煙
たばこの本数を減らす、もしくは禁煙をおすすめします。
喫煙はインプラントの寿命を縮める要因です。インプラントの安定が悪くなり、歯周病のリスクも高まります。
まとめ
寿命がきたインプラントを放置することはリスクがあるため、歯科医院で撤去してもらいましょう。インプラントの寿命がきても、顎の骨や口の中、全身状態に問題なければ、再度インプラントを埋入することが可能です。もし、インプラントの保証期間内の場合なら無償で治療できます。
インプラントの寿命は、日々のケアや定期的なメンテナンス、生活習慣などによって変わります。少しでも長い間、インプラントで噛めるように意識していきましょう。
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