前歯は人に見えやすく、歯並びによってコンプレックスに感じてしまいがちです。矯正治療と聞くと歯全体を矯正するイメージですが、前歯のみを矯正できる部分矯正をご存じでしょうか。部分矯正は、気になる前歯のみを矯正するため、全体矯正に比べて治療期間や費用がおさえられるのがメリットです。
今回は、気になる前歯のみを矯正する部分矯正のメリットや費用について解説します。治療方法や期間、適応症例もご紹介しますので、部分矯正を検討している方はぜひ参考にしてください。
前歯のみを矯正することはできる?
矯正治療には、全体の歯並びや噛み合わせをととのえる全体矯正と、前歯など気になる部分のみをととのえる部分矯正の2種類があります。歯並びの状態によりますが、部分矯正であれば前歯のみを矯正することは可能です。
前歯のみを矯正できる症例は、以下のとおりです。
- 軽度の叢生(そうせい)
- 軽度の出っ歯
- すきっ歯
- 軽度の受け口
- 開咬(前歯が噛み合わない歯並び)
- 正中のずれ(前歯の位置のずれ)
叢生とは、歯が重なって生えているガタガタした歯並びのことです。歯並びのお悩みで最も多く、八重歯も叢生に含まれます。
前歯は人に見えやすいため、お悩みをかかえている方も多いのではないでしょうか。いずれも歯並びの乱れが軽度である場合のみ、部分矯正で対応できます。
しかし、歯を動かすスペースが足りない場合や歯並びの乱れが重度である場合は、部分矯正ができません。また、部分矯正は前歯の歯並びをととのえることを目的としているため、噛み合わせや発音の改善はできません。
前歯のみを矯正するメリット・デメリット
前歯のみを部分的に矯正するメリットやデメリットは、以下のとおりです。
メリット
前歯のみを矯正するメリットは、以下の3つです。
全体矯正と比べて費用・期間・体の負担をおさえられる
前歯のみを矯正する最大のメリットは、全体矯正に比べて治療期間が短く、その分費用もおさえられることです。
治療期間が短いことで、痛みが続く期間もおさえられ、歯磨きなど治療中のお手入れの負担も軽くなるでしょう。
被せ物をせずに歯並びをととのえられる
歯を動かすのではなく、被せ物で歯並びをととのえる方法に「セラミック矯正」があります。
しかし、セラミック矯正は健康な歯を削らなくてはいけません。歯を削ると、しみやすくなったり、被せ物の内側が虫歯になったりするリスクがあります。
前歯を矯正することでコンプレックス解消できる
前歯は人に見えやすく、歯並びによってはコンプレックスに感じてしまいがちです。前歯のみを矯正することで、コンプレックスを解消でき、自信をもつことにつながります。
デメリット
前歯のみを矯正するデメリットは、以下の2つです。
適応できないケースがある
部分矯正は、歯並びの乱れが軽度の症例にしか適応できません。部分矯正で改善できない症例は、重度の叢生や骨格に問題がある場合の受け口や出っ歯などがあげられます。
歯並びが悪くなる主な原因は、歯の大きさに対して顎が小さいことです。そのため、歯を並べるスペースが足りない場合や、前歯だけでなく全体的に歯を動かさないといけない場合は、全体矯正をしなければいけません。無理に前歯のみを矯正しようとすると、歯を並べるスペースに限界があるため、歯を削る可能性や抜歯する可能性があります。
噛み合わせの改善ができない
前歯のみ矯正する部分矯正は、奥歯の歯並びや噛み合わせはととのえられません。そのため、前歯の見た目がよくなっても、噛み合わせや発音は改善できません。
前歯の矯正方法
前歯のみの矯正方法は、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の2種類あります。それぞれの矯正方法について、以下に解説します。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯の表面に金属のワイヤーをつけて歯を矯正する方法です。
ワイヤー矯正は、ほとんどの症例に対応できるのが最大のメリットです。歯に一気に力をかけて動かすので、歯を大きく動かす必要がある場合に適している治療ですが、歯に違和感や痛みが出やすいでしょう。また、歯の表面に金属の矯正装置をつけるため、どうしても目立ちます。見た目を気にするなら、ワイヤー部分を歯の裏側につける裏側矯正がありますが、でこぼこした金属部分が舌にあたりやすくなり、口内炎ができやすくなる場合やしゃべりにくくなる場合があるでしょう。
ワイヤー矯正は矯正力が強いため、歯を大きく動かす必要がある方や歯科医師に任せて治療を進めたい方に向いています。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、マウスピースを装着して歯を矯正する方法です。
専用のソフトウェアでお口の中をスキャンし、歯がどのように動くのか治療前に確認できます。治療前に確認することで、前歯の仕上がりに納得してから治療を始められます。また、薄くて透明なマウスピースを使用するので、ワイヤー矯正よりも目立ちにくいです。さらに、ご自身の好きなタイミングで取り外しできるので、食事や歯磨きの際もストレスがかからないのがメリットでしょう。
しかし、ワイヤー矯正よりも適応できる症例に限りがありという、装着時間を守らないと矯正の効果が得られないデメリットもあります。
マウスピース矯正は、目立たない矯正がご希望の方や装着時間を守れる方に向いているでしょう。
ご自身がどの矯正治療に適応しているかについては、歯科医師の判断が必要です。それぞれのメリットやデメリットを理解して検討するとよいでしょう。
前歯のみを矯正する場合にかかる費用
前歯のみを矯正する場合にかかる費用は、矯正方法によって異なります。
矯正方法ごとの費用の目安は、次のとおりです。
<前歯のみを矯正する場合にかかる費用の目安>
ワイヤー矯正(表側矯正) |
約15~60万円(税込) |
ワイヤー矯正(裏側矯正) |
約30~70万円(税込) |
マウスピース矯正 |
約10~50万円(税込) |
ワイヤー矯正は、表側矯正と裏側矯正の2種類あり、それぞれ費用が異なります。
表側矯正は、歯の表側に矯正装置をつける一般的なワイヤー矯正で、部分矯正の費用の目安は約15~60万円(税込)です。金属部分が目立つ表側矯正ですが、ワイヤーやブラケット部分を目立ちにくい色や素材に変更することもできます。裏側矯正は、歯の内側に矯正装置をつけるので、目立ちにくいのがメリットです。
しかし、表側矯正よりも値段が高いことや、表側矯正よりもワイヤー交換に時間がかかることなどがデメリットでしょう。
マウスピース矯正は、費用の目安が約10~50万円(税込)で、ワイヤー矯正に比べると安いです。なぜなら、1回歯型を採れば治療終了までのマウスピースを一気に作製できることにくわえ、ご自身でマウスピースを交換して治療を進めるので、定期的な調整が必要ないからです。
なお、ご紹介した費用は、前歯のみを矯正する場合にかかる一般的な費用の目安です。矯正治療は、ワイヤー矯正、マウスピース矯正に関わらず、保険適用ではありません。自費診療の場合は歯科医院によって費用に差がでるため、費用が気になる方は歯科医院に相談してみましょう。
前歯のみを矯正する場合にかかる期間
前歯のみを矯正する場合にかかる治療期間は、矯正方法によって異なります。矯正方法ごとの治療期間の目安は、以下のとおりです。
<前歯のみを矯正する場合にかかる治療期間の目安>
ワイヤー矯正(表側矯正) |
約3か月~1年 |
ワイヤー矯正(裏側矯正) |
約6か月~1年 |
マウスピース矯正 |
約3か月~1年 |
全体矯正の治療期間は1~3年ほどかかるのに対し、前歯のみを矯正する場合は約3か月~1年と短期間で治療が終わるのがメリットです。なぜなら、歯の根が2~4本ある奥歯は頑丈なのに対して、前歯は根が1本しかないので歯が動きやすいからです。歯並びの乱れが軽度で、前歯の微調整のみの場合は、早ければ3か月程度で治療が終わるでしょう。
ただし、歯並びの乱れ具合によって、歯を移動させるのに時間がかかるため、治療期間が1年ほどかかります。また、歯並びや顎の状態によって、前歯のみの部分矯正では対応できない場合もあります。まずは、前歯のみを部分的に矯正できるか、歯科医師にご相談するとよいでしょう。
まとめ
歯並びの状態によりますが、部分矯正で気になる前歯のみを矯正できます。前歯のみを矯正するほうが全体矯正よりも治療期間が短く、費用もおさえられます。また、コンプレックスの解消もできるので、自信をもつことにつながるでしょう。
しかし、適応症例が限られる、噛み合わせが改善できないなどのデメリットもあります。メリットだけでなく、デメリットも理解したうえで歯科医師に相談しましょう。
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