セラミック歯の寿命は、一般的に10~15年程度といわれています。
ただし、種類によって異なり、金属やプラスチック素材を使用するセラミック歯は寿命が比較的短いです。
今回は、種類別のセラミック歯の寿命と長持ちさせるためのポイントについて解説します。
セラミック歯の寿命はどれくらい?
セラミック歯の寿命の平均は、10~15年程度です。
ただし、セラミック歯のなかにはいくつか種類があります。セラミック以外に、歯科用プラスチック(レジン)や金属素材を使用したセラミック歯は、寿命が短い傾向にあります。
ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミックの寿命は、約7〜8年です。
ハイブリッドセラミックは、コンポジットレジン(プラスチック)とセラミックを混ぜ合わせた素材です。セラミックの審美性とコンポジットレジンのコスト効率を組み合わせたものといえます。保険適用の素材であるため、純粋なセラミックよりも安価に施術が可能というメリットがあります。
ハイブリッドセラミックの特徴は、以下のとおりです。
・硬さや耐久性が劣る
・変色しやすい
・審美性はそこまで高くない
・適用範囲が限られている(第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、第3大臼歯の被せ物として使用)
オールセラミック
オールセラミックの寿命は、約10~15年です。
オールセラミックは、全体がセラミック(陶器)でできているため、非常に高い審美性をもつ素材です。天然歯に近い美しい白さと透明感が特徴で、その見た目の自然さから口元の美しさを維持するのに最適といえるでしょう。
オールセラミックの特徴は、以下のとおりです。
・経年劣化がほとんどない
・汚れが付着しにくい
・二次虫歯のリスクが低い
・天然歯とほぼ同じくらい硬い(約400MPa)
・金属アレルギーのリスクがない
e-max
e-maxの寿命は、約10~15年です。
e-maxは、ニケイ酸リチウムガラスを主成分とするセラミックの一種です。
e-maxの特徴は、以下のとおりです。
・審美性が非常に高い
・オールセラミックより強度が高い
・耐久性に優れており、変色や二次虫歯のリスクが低い
・天然歯と同じくらい硬い(約400MPa)
・金属アレルギーのリスクがない
ジルコニア
ジルコニアの寿命は、約10年です。
ジルコニアは、その美しさと耐久性から「人工ダイヤモンド」とも称される素材です。
ジルコニアの特徴は、以下のとおりです。
・天然歯よりも硬度が高い(約1300MPa)
・審美性に優れている
・金属アレルギーのリスクがない
・強硬度から噛み合う歯を傷つける可能性がある
メタルボンド
メタルボンドの寿命は、約8年です。
メタルボンドは、中心が金属で、その表面にセラミックを焼き付けた被せ物です。
メタルボンドの特徴は、以下のとおりです。
・耐久性が非常に高い
・審美性にも優れているが、角度によっては金属が見える可能性がある
・金属アレルギーがある人には向かない
・金属イオンの溶けだしにより歯茎が変色することがある
・金属イオンが血液中に流れた場合は、頭痛やめまい、肩こりなどを発症するリスクがある
セラミック歯の寿命を短くする原因
セラミック歯は、銀歯やレジンに比べて耐久性に優れていますが、強い衝撃が加わると傷がつく可能性があります。また、口腔ケアを怠ると劣化を早める危険性もあります。
歯ぎしりや食いしばり
歯を強く食いしばる癖や睡眠中に歯ぎしりをする癖がある方は、セラミック歯が欠けたり割れたりしやすくなり、寿命が縮むので注意が必要です。
歯ぎしりをすると、セラミック歯は左右に大きく揺れます。食いしばりをすると、縦方向に強い力が加わります。また、歯ぎしりや食いしばりは、睡眠中や集中しているときに無意識に行われることが多く、1本あたり70〜100kgもの力がかかることもあります。セラミック歯が早く摩耗し、破損する原因となりますので注意しましょう。
歯ぎしりや食いしばりは、セラミック歯だけでなく、天然歯にも過剰な力を加え、顎関節症や頭痛・肩こりの原因にもなります。自覚がある方はナイトガードなどを装着し、歯を守りましょう。
適合状態が悪い
セラミックは、レジンや金属と比較して、歯との適合性が高い素材です。天然歯とぴったり合うよう精密な加工が可能で、装着時には特別な接着剤を使います。
しかし、その適合性の良し悪しは、歯型取りの精度や詰め物・被せ物を作り上げる歯科技工士の技量、そして装着時の歯科医師の技術によって大きく左右されます。これらの治療プロセスのどこか一つでもエラーが生じた場合、セラミック歯の寿命は短くなってしまうでしょう。
つまり、セラミック歯の寿命は、素材自体の質だけでなく、それを扱う医療スタッフの技術や経験にも大きく依存するのです。
噛み合わせの変化
年齢を重ねるとセラミック歯を支えている土台である歯茎が下がり始め、その結果、噛み合わせが変化することがあります。
噛み合わせが変わる原因としては、加齢のほかに、歯周病の進行やほかの歯科治療によるものも多いです。セラミック治療後に噛み合わせに違和感があった場合、歯に余計な力が加わっているサインであり、セラミック歯が壊れるリスクだけでなく、顎関節症、頭痛、肩こり、腰痛の原因ともなります。
強い衝撃を受ける
スポーツを頻繁に行う方で運動中にボールなどがセラミック歯に当たってしまうと、セラミック歯が割れたり欠けたりする原因になるため注意が必要です。よくある例としては、野球やテニスのボールが歯に当たってしまう場合、サッカーボールやバレーボールが顔面に当たる場合、あるいはボクシングで顔に衝撃を受けるなどが挙げられます。
このような事態を防ぐために、スポーツをする方は運動中にセラミック歯を保護するためにスポーツ専用のマウスピース(マウスガード)を装着することをおすすめします。
また、スポーツだけでなく、交通事故や転倒により顔面や歯に強い衝撃を受けてしまうことも、セラミック歯が割れてしまう原因の1つです。
口腔ケアが不十分
セラミック歯に限らず、口腔ケアが不十分な場合、虫歯のリスクが上昇し、セラミック歯の脱離や除去を余儀なくされることがあります。さらに、硬い歯ブラシで力を入れて磨くと、歯茎が下がり、歯根面が露出してしまう可能性があります。
歯根面が露出してしまうと、セラミック歯との接合部分が虫歯になるリスクが高まるのです。また、セラミック歯と自然歯の適合性を悪化させ、セラミック歯の寿命を縮める要因にもなります。
セラミック歯を長持ちさせるためのポイント
セラミック歯を長持ちさせるには、衝撃が加わることを避け、口腔内を清潔に保つことが重要です。
以下に、具体的な方法について紹介します。
ナイトガードを使用する
歯ぎしりや食いしばり癖がある方は、ナイトガード(マウスピース)の使用がおすすめです。ナイトガードを就寝前に装着することで、歯と歯が直接ぶつかることを防ぎ、過度な圧力や摩耗を軽減することができます。ナイトガードは、歯科医師が噛み合せの状態をチェックし、個々の歯型に合わせたものを製作します。適切にフィットするナイトガードは不必要な摩擦を減らし、セラミック歯を守ることにつながるでしょう。
また、ボトックス注射も効果的です。ボトックス注射は、無意識に歯を食いしばる癖を抑制することができます。
口腔ケアを徹底する
セラミック歯を長期間にわたり美しく保つためには、日々の口腔ケアが不可欠です。歯ブラシだけでなく、デンタルフロス、歯間ブラシを使用しましょう。
不適切な方法や口腔ケアを怠っていると、口内に汚れが蓄積し、細菌が歯と歯間に侵入します。これにより、虫歯や歯周病のリスクが増加します。歯ブラシは、柔らかく、ヘッドが小さなものを選びましょう。ブラシを歯と歯茎の間に45度の角度で置き、ゆっくりと小刻みに動かすことで、効果的に汚れやプラークを除去できます。
口腔ケアは毎日行うことが大切です。習慣化することで口内環境を整え、セラミック歯の寿命を長くすることができます。
定期的にメンテナンスを受ける
セラミック治療を受けたあと、寿命を延ばすためには、自己管理とともに、約半年ごとに歯科医師によるメンテナンスを受けることが重要です。
定期的な歯科医院でのメンテナンスにより、ご自身では取りきれなかった汚れや歯石をきちんと除去することができます。また、セラミックや噛み合わせの状態を同時にチェックすることも可能です。
セラミック歯と土台となる自分の歯との間にすき間が生じてしまうと、虫歯のリスクが増え、最悪の場合、セラミックが外れてしまうこともあります。適切な適合状態を保つためにも、定期的なメンテナンスは欠かせません。
まとめ
セラミック歯は、銀歯やレジンに比べて長持ちするといわれています。セラミックの種類によって多少変動はありますが、一般的に10~15年程度は使用できるとされています。
耐久性の高いセラミック歯ですが、強い衝撃が加わったり口腔内の清潔保持を怠ったりすると、寿命は短くなるでしょう。
反対に、必要な対策をとり、丁寧な歯磨きと歯科医院でのメンテナンスを欠かさなければ、平均的な寿命年数よりも上回る可能性があります。
セラミック歯は自費診療のものがほとんどです。時間や費用を無駄にしないためにも、治療後は半年に1回程度のペースで通院しましょう。
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