インプラント治療のリスクとは?治療をおすすめしない人も解説

インプラントの模型をもつ人の手元

インプラント治療のリスクとして、インプラント周囲炎やインプラントの脱落などが挙げられます。手術中のリスクとしては、上顎洞へのインプラントの迷入や神経損傷などが考えられるでしょう。

今回は、インプラント治療のリスクや治療をおすすめしない人などを詳しく解説します。

インプラントとは

インプラントの模型

歯科治療におけるインプラントとは、失われた天然歯を人工的に再現する治療法の一つです。患者さまが自身の歯を失った場合に、代わりとなる人工歯根を口腔内の骨に埋め込んで歯を補います。人工歯根は主にチタン製で、上に取り付けられる人工歯は天然歯を模して作られます。

インプラントの一番の特長は、ほかの歯に影響を与えずに欠損部を補える点です。ブリッジのように隣接する歯を削る必要がなく、健康な歯を保護しつつ失った歯を補うことが可能なのです。

インプラントは、天然歯と同様に噛む機能を果たします。自然な見た目も特徴でしょう。患者さまの噛む力や話す能力、見た目の美しさを維持することができます。

しかし、インプラント治療は外科手術や適切なメンテナンスを必要とします。手術には専門的な技術と知識が求められるため、経験豊富な歯科医師による治療を受けることが重要です。

インプラント治療のメリット・デメリット

demerit mertiが書かれrた看板

インプラント治療は、審美性だけでなく機能性も高いため、天然歯と遜色ない人工歯が仕上がります。高品質な素材などにより、費用が高くなることがデメリットでしょう。

インプラント治療のメリット

インプラントは、見た目がよく機能面にも優れています。インプラント治療のメリットは、以下の5つです。

インプラント治療のデメリット

インプラント治療のデメリットは、以下の4つです。

インプラント治療にはどのようなリスクがある?

eiskと書かれた木のブロック

 

インプラント治療は、手術中だけでなく、手術後にもさまざまなリスクが存在します。インプラント治療のリスクは、以下のとおりです。

インプラント周囲炎

インプラント治療を受けた方のなかには、インプラント周囲炎という感染症になる方がいます。

インプラント周囲炎は、人工歯根の周りに発生する炎症で、天然歯に見られる歯周病と同様の病態です。インプラント周囲炎が進行すると、人工歯根の周りの顎の骨が吸収され、インプラントの除去が必要になることがあります。

天然歯にも歯周病を抱えている方はインプラント周囲炎になりやすいです。日頃の歯のメインテナンスが不十分であると、天然歯だけでなくインプラントも感染症にかかりやすくなります。インプラント治療を受ける場合、適切な歯磨きや定期的な歯科医院でのメインテナンスが欠かせません。

金属アレルギー

インプラント治療で埋入される人工歯根の素材は、主にチタンです。人工関節などにも使用されるチタンは、生体親和性が高く、金属アレルギーを引き起こすことも少ないとされていました。

しかし、最近の研究では、チタン自体も金属アレルギーの原因となる可能性があることが示唆されています。手のひらや皮膚に湿疹のような症状があらわれ、なかなか改善しない場合は、チタンに対する金属アレルギーの可能性を疑うべきでしょう。チタンに対するアレルギー反応は稀ですが、体調に異変を感じた際は歯科医院に相談してください。

上顎洞への迷入

インプラント治療では、上顎の上に存在する上顎洞という空洞にインプラントが迷入するリスクがあります。特に、上顎洞周辺に新たに骨を作り出すサイナスリフトやソケットリフトという手術を行う際にリスクが高まります。

上顎洞へのインプラント迷入は、CTスキャンなどの術前検査によって防ぐことが可能です。検査を行うことで、骨の厚みや骨質の詳細を把握することができ、適切な位置へのインプラント設置を計画できるでしょう。

術前検査をしっかりと行うこと、検査結果に基づいた適切な治療計画を立てることが、インプラント治療の成功につながります。

神経損傷

下顎には大きな神経がある下顎管が通っており、近くにインプラントを設置すると唇や舌、歯肉、歯牙などに一時的な麻痺が生じることがあります。

神経麻痺は、適切な術前検査によって避けることが可能です。治療前にCTスキャンを行い、下顎管の正確な位置を確認することが重要です。下顎管の位置を把握してインプラントの設置位置と深さを正確に計画することで、下顎管神経を避け、麻痺を防ぐことができるでしょう。

CTを使用せずにインプラント治療を進めると、下顎管神経にダメージを与える可能性があります。麻痺のリスクが高まるため注意しましょう。

インプラントの脱落

インプラント治療では、埋入したインプラントが骨と適切に結合しないと、稀に抜け落ちることがあります。患者さまの喫煙や清掃不良による感染が主な原因となることが多いです。

しかし、歯科医院の手術時の滅菌不良によって、インプラントの脱落が引き起こされることもあります。滅菌処理が不十分な歯科医院でインプラント治療を行うと、感染症によってインプラントが骨と適切に結合せず、脱離するリスクが高まります。

インプラント治療をおすすめしない人

悩んで目を伏せる女性

インプラント治療は、入れ歯やブリッジとは異なり、外科手術を伴います。身体への負担が大きいため、リスクの大きい人にはおすすめできません。

インプラント治療をおすすめしない人は、以下のとおりです。

喫煙習慣がある人

喫煙は、口腔内の健康に悪影響を及ぼします。喫煙者は、非喫煙者に比べてインプラント周囲炎にかかりやすいとされています。病状の進行が速く、治療も困難となることが研究で明らかになっているのです。

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させるため、歯茎の血行が悪化するでしょう。歯茎に酸素や栄養が適切に供給されなくなります。血行が悪化すると唾液の分泌が減少し、細菌と戦う白血球の活動も低下します。プラークや歯石が付きやすくなり、歯周病を引き起こしやすくなるのです。

インプラント治療を受ける際は、生活習慣の改善、特にタバコの本数を減らすなどの取り組みが重要といえます。

歯ぎしりや食いしばりがある人

歯ぎしりや食いしばりは、インプラントや周囲の顎の骨にも負担をかける可能性があります。過度な歯ぎしりや食いしばりは、インプラントの寿命を短くする原因となるため注意が必要です。

歯並びや噛み合わせを見直して改善することで、インプラントを長持ちさせられます。重度の歯ぎしりの場合、就寝時にマウスピースを用いるなどしてインプラントへの負担を軽減させる必要があるでしょう。

心臓病や糖尿病などの全身疾患がある人

心臓病や糖尿病などの全身疾患を抱える方は、インプラント治療を受けられない場合があります。処方されている薬の作用によって、術後の出血が止まりにくくなることがあるからです。

全身疾患を持つ患者さまがインプラント治療を検討する際は、必ず事前に歯科医師に相談してください。全身状態や現在服用中の薬について詳しく伝え、治療の可否やリスクを十分に理解して進めましょう。全身の病状や薬の影響が心配な場合でも適切な治療計画を立てることで、安全にインプラント治療を受けられる場合があります。

歯磨きを怠る人

インプラントの治療後にトラブルを防ぐには、適切なオーラルケアが必要です。セルフケアが不十分な場合、歯垢が蓄積し、インプラント周囲炎のリスクが高まるでしょう。

日々の口腔ケアを徹底することが困難な方や口腔ケアに対する意識が低い方は、インプラントは向いていません。

定期的なメンテナンスに通えない人

インプラント治療は、定期的なメンテナンスが非常に重要です。忙しく定期的に歯科医院へ通院することが難しい方には、インプラント治療は向いていないでしょう。

メンテナンスでは、インプラントの嚙み合わせが適切であるか、インプラントが埋入された部位や周囲に炎症が起きていないかなどを確認します。3〜6か月に一度行うことが推奨されています。

妊娠中の人

妊娠中にインプラント治療を行うと、母体や胎児に影響を与える可能性があります。妊娠期間は、治療を避けたほうがよいでしょう。

インプラント治療は外科手術を伴い、必要に応じて薬の投与も行われます。妊娠中の母体や胎児に影響を与える薬もあるでしょう。妊娠中は一時的に入れ歯を使用する、産後の体調が回復するまで治療を延期するなど、母体と胎児の健康を守る選択をしてください。

骨密度が低い人

インプラント治療は、人工歯根を顎の骨に埋め込むため顎の骨密度が低い人には適していません。骨粗しょう症の方や、高齢で骨密度が低下している方は、インプラント治療の適応外となることがあります。

骨密度が低い人が治療を希望する場合は、事前に歯科医師に骨の状態を評価してもらう必要があります。骨密度や骨の量などを詳しく調査し、患者さまが安全に治療を受けられるかどうかを判断するのです。骨密度が低いとインプラントの安定性が保てず、失敗のリスクが高まります。

信頼できる歯科医院の選び方

レントゲンを指して説明する医師

 

インプラント治療は、事前の丁寧な検査に加えて高度な技術が必要とされる治療法です。インプラント治療のリスクを下げるには、歯科医院選びが重要でしょう。

インプラントの治療実績が豊富である

インプラント手術を行う歯科医院を選ぶ際は、治療実績や経験年数、保有資格などが重要な指標といえます。

例えば、インプラント専門医という日本口腔インプラント学会が認定する資格は、取得に必要な症例数が数十本程度と比較的少ないです。インプラント専門医の資格だけで歯科医師の実績を判断するのは困難でしょう。インプラント専門医の資格を持っていても、症例数がそれほど多くない医師もいます。

所有している資格だけでなく、具体的な症例数や結果を公開している歯科医院を選んでください。

最新の設備や衛生環境が整っている

安全で精密なインプラント治療を行うには、歯科用CTによる画像診断が必須です。レントゲンでは2次元画像しか得られず、骨の厚みや深さ、神経などの位置の正確な評価が難しいからです。

CTは立体的(3次元)な画像を提供するため、骨の構造を詳細に把握できます。詳細な情報は人工歯根を正確に配置するために不可欠で、神経や血管を損傷するリスクを大幅に減らします。

インプラント治療は外科手術を行うため、手術室の衛生管理も大切です。使用される器材の滅菌はもちろん、スタッフの衛生管理も徹底されていなければなりません。

手術には必ず感染リスクが伴うので、衛生管理が徹底されていることも歯科医院選びの重要なポイントといえます。

アフターケアが充実している

インプラント治療は、手術後に長期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスは、インプラントの寿命に大きな影響を与えます。適切なケアを継続することで、インプラントの寿命を10年、20年と大幅に延ばすことができるでしょう。

メンテナンスには、定期的なクリーニングや診察、必要に応じた微調整が含まれ、すべてインプラントを長持ちさせるために重要です。アフターケアが充実した歯科医院を選ぶとよいでしょう。

まとめ

頬に手を添えて笑う女性

インプラント治療には、上顎洞へのインプラントの迷入や神経損傷など、手術中に起こりうるリスクを始め、インプラント周囲炎やインプラントの脱落などの手術後に考えられるリスクもあります。

手術中のリスクを低減するには、歯科医院選びが重要です。歯科用CTが導入されており、インプラント治療の治療実績が豊富な歯科医院を選ぶことで、リスクを最小限に抑えられます。

インプラント治療後のリスクは、患者さまも気をつけなければなりません。喫煙はインプラントの脱落につながるため、禁煙する必要があります。日々の歯磨きや定期的なメンテナンスは、インプラントのリスクを減らすために非常に重要です。

インプラントは適切なケアを続けることで、長期的に使用できる人工歯です。費用や時間を無駄にしないためにも、歯科医師の指示を守り、セルフケアをしっかりと行いましょう。

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