お子様の指しゃぶり・おしゃぶりの習慣について、「いつまで続けていいの?」「歯並びに影響はないの?」と心配されている保護者の方は多いのではないでしょうか。
実は、指しゃぶりやおしゃぶりは、赤ちゃんにとって安心感を得るための自然な行動です。しかし、長期間続けると歯並びや顎の発育に影響を及ぼす可能性があります。
そこでこの記事では、指しゃぶり・おしゃぶりがお子様の口腔発育に与える影響、やめるべき時期の目安、そして無理なくやめられる対処法について、歯科医療の観点から詳しく解説します。お子様の健やかな成長のために、ぜひ参考にしていただければと思います。
目次
- 指しゃぶり・おしゃぶりとは?基礎知識を理解しよう
- 歯並びへの影響:どんな問題が起こる?
- いつまでに卒業すべき?年齢別の目安
- 指しゃぶり・おしゃぶりが続く原因
- 無理なくやめるための対処法
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
1. 指しゃぶり・おしゃぶりとは?基礎知識を理解しよう

指しゃぶり・おしゃぶりは自然な行動
まず知っていただきたいのは、指しゃぶりは赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる胎児の頃から見られる自然な行動だということです。実際に、超音波検査で指をしゃぶる姿が確認されることもあり、これは生まれた後に母乳やミルクを飲むための準備とも言われています。
つまり、生後間もない赤ちゃんにとって、指しゃぶりやおしゃぶりは以下のような重要な役割を果たしているのです:
- 安心感を得る手段:不安や眠気を感じた時の精神安定剤のような役割
- 吸啜反射の表れ:本能的な反射行動の一つ
- 探索行動:自分の体や周囲を認識する学習過程
したがって、1歳頃までは、これらの行動は発達の正常な過程と考えられており、過度に心配する必要はありません。
指しゃぶり、おしゃぶりの違い
一方で、指しゃぶり、おしゃぶりには、それぞれ異なる特徴があります。
おしゃぶりについては、親がコントロールしやすく、形状が工夫されているため歯並びへの影響が比較的少ないと言われています。さらに、衛生管理がしやすく、やめさせる際にも物理的に取り除くことができます。
これに対して、指しゃぶりは、いつでもどこでもできてしまうため習慣化しやすく、吸う力も強くなりがちです。特に、特定の指(多くは親指)を強く吸い続けることで、歯並びへの影響が大きくなる傾向があります。
2. 歯並びへの影響:どんな問題が起こる?

開咬(かいこう)
では、具体的にどのような影響があるのでしょうか。まず、指しゃぶり・おしゃぶりによって最も起こりやすいのが「開咬」という状態です。
開咬とは、奥歯を噛み合わせても前歯が閉じず、上下の前歯の間に隙間ができてしまう歯並びのことを指します。例えるなら、口を閉じても前歯だけが開いているような状態です。
その結果、開咬になると:
- 麺類を前歯で噛み切れない
- 発音が不明瞭になる(特にサ行、タ行)
- 口呼吸になりやすい
- 食べ物を上手く噛めず、消化に負担がかかる
といった日常生活への影響が出てくる可能性があります。
上顎前突(出っ歯)
次に、指やおしゃぶりを吸うことで、上の前歯が前方に押し出され、いわゆる「出っ歯」の状態になることがあります。
正式には「上顎前突」と呼ばれるこの状態は、横から見たときに上の前歯が下の前歯よりも大きく前に出ている歯並びです。
このため、上顎前突には以下のような問題点があります:
- 見た目のコンプレックスにつながる可能性
- 前歯をぶつけてケガをしやすい
- 口が閉じにくく、乾燥しやすい
- 将来的に矯正治療が必要になる場合がある
交叉咬合(こうさこうごう)
さらに、片方の指ばかりを吸っていると、左右のバランスが崩れて「交叉咬合」という歯並びになることがあります。
具体的には、上下の歯を噛み合わせたときに、本来外側にあるべき上の歯が下の歯の内側に入ってしまう状態です。その上、顎の成長にも左右差が生じ、顔の歪みにつながる可能性も指摘されています。
影響が出やすい時期
それでは、いつ頃から影響が出やすくなるのでしょうか。一般的に、3歳以降も習慣が続いている場合、歯並びへの影響が出やすくなると言われています。特に、永久歯が生え始める6歳前後まで続いていると、より深刻な影響が懸念されます。
3. いつまでに卒業すべき?年齢別の目安

0〜1歳:心配不要な時期
まず、この時期の指しゃぶり・おしゃぶりは、発達の正常な過程です。そのため、無理にやめさせる必要はなく、むしろお子様の精神的な安定のために必要な行動と考えられます。
1〜2歳:自然に減少する時期
続いて、1歳を過ぎると、手や口以外での遊びが増え、興味の対象が広がることで、自然と指しゃぶりの頻度が減っていくお子様が多くなります。
ただし、眠い時や不安な時にだけする程度であれば、まだ心配する段階ではありません。実際、日中の起きている時間にほとんどしなくなっていれば、良い傾向と言えるでしょう。
3〜4歳:卒業を意識し始める時期
そして、3歳頃になると、言葉でのコミュニケーションが十分にとれるようになり、「やめようね」という働きかけが理解できるようになります。
したがって、この時期からは、徐々に卒業に向けて意識していくことが推奨されます。なお、保育園や幼稚園に通い始めることで、自然とやめられるお子様も多いです。
ただし、無理強いは逆効果になることもあるため、お子様のペースを尊重しながら進めることが大切です。
5歳以降:積極的な対応が必要な時期
一方、5歳を過ぎても習慣が続いている場合は、歯並びへの影響が出始めている可能性があります。そのため、小学校入学前には卒業できるよう、より積極的に対応していくことが推奨されます。
実は、この時期になると、お子様自身も「やめたいけどやめられない」という葛藤を抱えている場合が多いです。ですから、歯科医院での専門的なアドバイスを受けることも検討していただくとよいでしょう。
4. 指しゃぶり・おしゃぶりが続く原因

精神的な要因
ではなぜ、指しゃぶり・おしゃぶりが長期化してしまうのでしょうか。実は、その背景には、多くの場合、精神的な要因があります。
例えば、不安やストレスとして:
- 環境の変化(引っ越し、転園など)
- 弟や妹の誕生
- 保護者の方の仕事が忙しく、スキンシップが減った
- 叱られることが多い
また、寂しさや愛情不足として:
- 日中の大部分を一人で過ごしている
- 保護者の方とのコミュニケーションが少ない
つまり、こうした状況でお子様は、指しゃぶりによって心の安定を図ろうとしている場合があるのです。
習慣化・癖になっている
その一方で、最初は精神的な理由から始まった「指しゃぶり」も、年齢が上がるにつれて単なる「癖」になっていることがあります。
たとえば:
- テレビを見ている時
- 本を読んでいる時
- 眠くなった時
など、特定の状況で無意識に行っている場合は、習慣化していると考えられます。
口腔周囲の筋肉のバランス
さらに、口の周りの筋肉(口腔周囲筋)の発達が十分でない場合、口を閉じておくことが難しく、何かを口に入れていたくなることがあります。
加えて、鼻呼吸が上手くできず口呼吸が習慣化している場合も、「指しゃぶり」が続きやすい傾向があります。
5. 無理なくやめるための対処法

基本的な心構え
それでは、どのように対処していけばよいのでしょうか。まず、「指しゃぶり」や「おしゃぶり」をやめさせる際の最も重要なポイントは、お子様を責めたり、無理に禁止したりしないことです。
なぜなら、「いけないこと」として叱ると、かえってストレスが増えて習慣が強化されてしまう可能性があるからです。ですから、お子様の気持ちに寄り添いながら、一緒に卒業を目指す姿勢が大切です。
年齢別の具体的な対処法
2〜3歳のお子様
まず、この年齢のお子様には、以下のような方法が効果的です。
- 注意をそらす
- 「指しゃぶり」を始めそうになったら、手を使う遊びに誘う
- お絵かき、粘土、ブロック遊びなど、両手を使う活動を増やす
- 「一緒に○○しよう」と前向きな声かけをする
- たくさんスキンシップをとる
- 抱っこや添い寝の時間を増やす
- 手をつなぐ、頭をなでるなど、日常的な触れ合いを大切に
- 不安を感じている時は、特に丁寧に寄り添う
4〜5歳のお子様
一方、4〜5歳のお子様には、より意識的なアプローチが有効です。
- 本人の意識を促す
- 「もうすぐ幼稚園だね」「お兄ちゃん・お姉ちゃんになったね」と成長を認める
- 「指しゃぶり」をしていない時に「今日は、指しゃぶりしてないね、すごいね」と褒める
- 歯並びの絵本などを一緒に見て、理解を促す
- 目標設定とごほうび
- カレンダーにシールを貼るなど、視覚的に成果がわかる工夫をする
- 一定期間できたら、お子様が喜ぶ小さなごほうびを用意する
- 「できた」という達成感を大切にする
- 寝る時の工夫
- 手袋や包帯など、物理的な対策を「一緒に卒業しようね」という前向きな形で取り入れる
- 添い寝をして手を握る
- お気に入りのぬいぐるみを持たせる
環境を整える
そのほかにも、環境面での工夫が重要です。
生活リズムの見直し
- 十分な睡眠時間の確保
- 規則正しい食事時間
- 日中の運動や外遊びの時間を増やす
ストレス要因の軽減
- お子様の話をゆっくり聞く時間を作る
- 叱ることよりも褒めることを意識する
- 家族でリラックスできる時間を大切にする
専門家のサポートを活用
それでも、なかなか改善が見られない場合や、すでに歯並びへの影響が出ている場合は、歯科医院での相談をお勧めします。
具体的には、歯科医院では:
- 現在の歯並びの状態を詳しく診査
- お子様の発達段階に応じたアドバイス
- 必要に応じて口腔機能訓練(MFT)の指導
- 矯正装置を使った治療の提案
など、専門的な観点からサポートすることができます。
6. よくある質問(Q&A)

Q1. 「指しゃぶり」と「おしゃぶり」、どちらの方が歯並びへの影響は少ないですか?
A. 一般的には、おしゃぶりの方が歯並びへの影響は少ないと考えられています。
というのも、おしゃぶりは形状が工夫されており、吸う力も指しゃぶりに比べて弱めだからです。また、親御さんがコントロールしやすく、卒業させやすいというメリットもあります。
ただし、どちらであっても長期間継続すれば歯並びへの影響は出てくる可能性がありますので、3歳頃を目安に卒業を意識していくことが推奨されます。
Q2. 寝る時だけ「指しゃぶり」をしています。それでも影響はありますか?
A. 実は、寝ている間の指しゃぶりも、継続的に行われると歯並びへの影響が出る可能性があります。
なぜなら、睡眠中は無意識のため、日中よりも長時間、同じ姿勢で吸い続けていることが多く、歯や顎に持続的な力がかかるからです。そのため、4歳以降も寝る時の指しゃぶりが続いている場合は、少しずつ対策を始めることをお勧めします。
Q3. すでに前歯に隙間ができてしまいました。治りますか?
A. 実は、早期に指しゃぶりをやめられれば、自然に改善する可能性があります。
特に乳歯の段階であれば、習癖をやめることで歯や顎の位置が正常に戻っていくケースも多く見られます。ただし、永久歯が生えてからも影響が残っている場合や、骨格的な問題が生じている場合は、矯正治療が必要になることもあります。
ですから、まずは歯科医院で現在の状態を確認してもらい、適切な対応について相談されることをお勧めします。
Q4. 上の子の時は自然にやめられたのに、下の子がなかなかやめられません。
A. 実際、きょうだいでも、性格や環境への適応の仕方は異なります。
例えば、下のお子様の場合、上のお子様の存在がストレス要因になっていたり、「赤ちゃん扱いされたい」という気持ちから指しゃぶりが続いたりすることがあります。
したがって、下のお子様だけの特別な時間を作る、上のお子様と同じように扱う、など、その子に合わせた対応を工夫してみてください。
Q5. 何歳まで様子を見ていいのでしょうか?
A. 基本的には、3歳頃から卒業を意識し始め、遅くとも小学校入学前(6歳)までには卒業できることが理想的です。
特に、5歳を過ぎても頻繁に指しゃぶりをしている場合は、一度歯科医院で相談されることをお勧めします。そうすることで、現在の歯並びの状態を確認し、必要に応じて専門的なサポートを受けることができ、お子様の負担も少なく卒業できる可能性が高まります。
Q6. 爪を噛む癖も気になります。関係はありますか?
A. 実は、爪を噛む癖と指しゃぶりは、どちらも不安やストレスの表れとして現れることが多く、心理的な背景が似ている場合があります。
さらに、爪噛みも歯並びや前歯の先端の摩耗などの影響が出ることがあります。ですから、指しゃぶりの対策と同様に、お子様の心理的な安定を図りながら、優しく改善を促していくことが大切です。
7. まとめ
ここまで見てきたように、指しゃぶりやおしゃぶりは、小さなお子様にとって自然な行動であり、安心感を得るための大切な手段です。しかしながら、長期間継続すると歯並びや顎の発育に影響を及ぼす可能性があります。
この記事のポイント
- まず、3歳頃から卒業を意識し、遅くとも小学校入学前までには卒業を目指しましょう
- 次に、開咬・上顎前突・交叉咬合などの歯並びへの影響が出る可能性があることを理解しましょう
- そして、お子様を責めず、寄り添う姿勢が卒業への近道です
- また、環境を整え、スキンシップを増やすことで精神的な安定を図りましょう
- さらに、専門家のサポートを活用することも効果的です
つまり、指しゃぶりやおしゃぶりの卒業は、お子様にとっても保護者の方にとっても、一つの成長のステップなのです。ですから、焦らず、お子様のペースを大切にしながら、一緒に取り組んでいきましょう。
最後に、もし歯並びへの影響が心配な場合や、なかなか卒業できずお悩みの場合は、お気軽に歯科医院にご相談ください。お子様の成長段階に応じた適切なアドバイスとサポートを受けることで、健やかなお口の発育を守ることができます。
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